第4章「Sベンズレザーができるまで part2」

2ヶ月以上かけて皮から革へ

次にタンニンなめしの工程に入ります。

Sベンズレザーのなめしには、南アフリカ産の[ミモザ]という植物のタンニンが使われています。

そして、このプールのようなものが「ピット槽」と呼ばれるもので、このピット槽にはタンニンを溶かした水溶液が入っています。

いくつもピット槽があるのは、それぞれタンニンの濃度を変えているんです。

このピット槽での、Sベンズレザーのタンニンなめしの工程には、どのくらい時間がかかると思いますか?

先にご紹介した、薬品によるクロムなめしは1~5日で済むのですが、Sベンズレザーをつくるためのタンニンなめしには、

なんと、2ヶ月以上もかかるのです。

長時間かけて、薄い水溶液から濃い水溶液へと順番に浸けることで、タンニンが皮のコラーゲンにゆっくり結合していきます。

これが、丈夫な革をつくるために、とても大事なんです。

Sベンズレザーの丈夫さ、コシの強さは、このピット槽でじっくりと時間をかけてなめすからこそ、生み出せるものなんです。

余談ですが、ピット槽の周りには、嗅いだことのない独特の匂いが漂ってまして、、

この匂いは何かと訊ねると、なめしの際に原皮から出てくる不要なタンパクの匂いだそうで、これを捨てないと革が臭くなってしまうとのこと。

だから昭南皮革さんでは、皮を上げた後のピット内のタンニンは惜しみなく捨てるそうで、これが、Sベンズレザーが高価になってしまう理由の一つだと教えていただきました。

昭南皮革さんのタンナー見学をさせていただいた際、このような細やかな気遣いをいたるところで感じることができ、やはり日本の職人さんの、ものづくりに対する姿勢って素晴らしいなと思いました。

ここだけは撮影NGです

実はこのタンナー見学で、ここだけは撮影NGですと言われた場所があるんです。

それは、独自の[加脂]を行なっている場所。

Sベンズレザーの正式名称は[昭南多脂ベンズレザー]といいます。

多脂とは、[多くの脂=オイルを含ませてある]という意味なんです。

Sベンズレザーを手に取っていただいた方はご存知かと思いますが、とてもモッチリしてるんですよね。

このモッチリ感は、なめしの工程の後、たっぷりとオイルを含ませている=加脂しているからなんです。

どうやったらこのモッチリ感が出せるのか興味津々だった私に、撮影こそNGでしたが、担当の方が加脂について、色々と話を聞かせてくれました。

詳しくは書けませんが、一つ言えるのは、オイルの成分、加脂方法、独自の装置は、他では絶対に真似できないということ。

その方の顔つきからは、良い革をつくりたいという情熱は誰にも負けないという、気迫のようなものすら感じました。

しかし私が、「Sベンズレザーのファンで、10年以上使わせていただいてます」とお伝えすると、溢れんばかりの笑顔を見せてくださり、そのギャップがとても印象的でした。

私が惚れ込んだSベンズレザーという革は、やはり素敵な職人さんによってつくられていたんだと嬉しくなりました。