Sベンズレザーができるまで part2

こんばんは。

SWL leather works(エスダブルエル レザーワークス)クラフトマンの田島隆治です。

さて昨日の続きですが、

Sベンズレザーのタンニンなめしの工程、どのくらい時間がかかると思いますか?

先にご紹介したクロムなめしは1~5日で済みますが、
Sベンズレザーをつくるためのタンニンなめしは、

なんと、2ヶ月以上もかかるのです。

長時間かけて、薄い→濃い水溶液に順番に浸けることで、
タンニンが皮のコラーゲンにゆっくり結合していきます。

これが、丈夫な革をつくるために、とても大事なんです。

ちなみに前回のブログで紹介した「ドラム」に皮とタンニンを入れて、
より短期間でなめす方法もあるのですが、

ドラムの回転で皮にアクションが加わり、繊維がほぐされて、
柔らかくなってしまうそうなんですね。

つまり、Sベンズレザーの丈夫さ、コシの強さは、
このピット槽でじっくりと時間をかけてなめすからこそ、
生み出せるものなんですねよね。

余談ですが、ピット槽の周りには、嗅いだことのない独特の匂いが漂ってまして、、

この匂いは何かと訊ねると、なめしの際に原皮から出てくる不要なタンパクの匂いだそうで、
これを捨てないと革が臭くなってしまうとのこと。

だから昭南皮革さんでは、皮を上げた後のピット内のタンニンは惜しみなく捨てるそうで、
これが、Sベンズレザーが高価になってしまう理由の一つだと教えていただきました。

それを聞いた時、以前友人が、ある国で買ってきた革製品がめっちゃ臭いんやけど
なんでやろ?って言ってたのを思い出しました。笑

昭南皮革さんのタンナー見学をさせていただいた際、
このような細やかな気遣いをいたるところで感じることができ、
やはり日本の職人さんの、ものづくりに対する姿勢って素晴らしいなと思いました。

実はこのタンナー見学で、ここだけは撮影NGですと言われた場所があるんです。

それは、独自の加脂を行なっている場所。

Sベンズレザーの正式名称は「昭南多脂ベンズレザー」といい、
昭南皮革さんがつくる多脂ベンズレザーなのですが、
多脂とは、多くの脂=オイルを含ませてある、という意味なんです。

Sベンズレザーを手に取っていただいた方はご存知かと思いますが、
とてもモッチリしてるんですよね。

このモッチリ感は、なめしの工程の後、たっぷりとオイルを含ませている、
つまり加脂しているからなんです。

どうやったらこのモッチリ感が出せるのか興味津々だった私に、撮影こそNGでしたが、
担当の方が加脂について、色々と話を聞かせてくれました。

詳しくは書けませんが、一つ言えるのは、
オイルの成分、加脂方法、独自の装置は、他では絶対に真似できないということ。

その方の顔つきからは、良い革をつくりたいという情熱は誰にも負けないという、
気迫のようなものすら感じました。

しかし私が、「Sベンズレザーのファンで、10年以上使わせていただいてます」
とお伝えすると、溢れんばかりの笑顔を見せてくださり、
そのギャップがとても印象的でした。

私が惚れ込んだSベンズレザーという革は、
やはり素敵な人によってつくられていたんだと嬉しくなりました。

明日につづく★

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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