PROFILE

私は29歳の時、一級建築士の職を脱サラした。本当にやるべきことが他にあるのではないかという想いと、何を成すためのこの命なのか探求したいという想いが年々強くなり、それを無視できなくなってしまったのが20代最後の年だった。そこから、自分が無条件に情熱を注げそうなことを片っ端からやってみる日々を過ごした。そして31歳の時、ある出会いをきっかけに、レザークラフトの世界に足を踏み入れた。

レザークラフトのみならず陶芸・木工・彫金など手工芸の世界には、素材と向き合い技を磨くことに人生を捧げた“人の手”でしか生み出せないものがあり、私はそれらが持つ力強さや美しさに惹かれてきた。そして自分もそういった作品を生み出したいという想いで、革と向き合い研鑽を重ねてきた。それと同時に、私を未知の世界へと導き感性を刺激してくれるアートにも心惹かれ、自らの作品でもそういった表現に挑みたいと思い、長年独自の表現手法を模索してきた。

しかしある時行き詰まってしまい、これまで自分が蓄積してきた知識と経験だけでは、表現の幅に限界を感じた。その時、もっと自由な表現のためにアートをより深く学ばなければいけないと思った。そこから、今まで以上に美術館に足を運んだり、様々な芸術家の生涯や思想にまつわる書籍を読みあさる日々を過ごした。また私は20代の頃、バックパックを背負って世界を歩き周る旅好きな青年だったが、革と本気で向き合う決意をした際、旅を封印した。しかし50歳を機にそれを解くことにした。学生時代のような長旅とはいかないが、20代の頃にはできなかった経験をするための旅を始めた。

そうした時を過ごすうちに、アートや旅の経験による学びから築き上げてきた自分の精神世界が、純粋に作品に現れ始めた。革を使ったより自由な表現の可能性を感じ、創作意欲がモリモリと湧いてきている。自由で純粋な表現の道を見出すことができたのは、学びという光があったからだ。

自分がつくる作品も誰かにとっての光になればという想いが、私の中に芽生え始めている。

革でものづくりを始めて20年が過ぎ、ようやく何を成すためのこの命なのか、少しだけ分かったような気がしている。この命が終わる日まで、Solitude Without Loneliness(寂しさのない孤独)という屋号を掲げ、自分のつとめに専念したい。

田島隆治/RYUJI TASHIMA

1972年生まれ 熊本出身

1995年~2001年(23~29歳) 
大手建設会社で一級建築士として設計業務に携わる。

2003年~2009年(31~37歳) 
独学でレザークラフトを始め、様々なアルバイトをして食い繋ぎながら、独自の表現を探求する日々を過ごす。

2009年~2015年(37~43 歳) 
どのジャンルにも属さず、量産するブランド化もせず、ただ一人の作家として、自分が創るべきものを探求し続けていきたいという想いで、Solitude Without Loneliness(寂しさのない孤独)の頭文字を取り、SWL leather worksを設立。
大阪にアトリエを構え、全国各地のイベントに出店しながら作品を販売する。

2015年~2018年(43 ~46歳) 
京都にアトリエを移し、妻のいづみが本格加入し、二人体制に。関西を皮切りに、関東、九州で個展を開催する。 

2018年(46歳) 
京都・一乗寺にアトリエを併設したショップを構える。

2024年(51歳)
より理想的な創作環境をつくるべく、アトリエを京都・北白川に移転。
屋号を atelier SWL とする。

現在、新アトリエ計画進行中(2025年完成予定)

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